宇宙滞在による人への健康影響を調べるため、国際宇宙ステーション(ISS)でメダカを長期飼育する計画が始動した。11年度の打ち上げを目指し、水槽開発や研究テーマの検討のため、東京大、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など国内の約20研究機関が「宇宙メダカコンソーシアム」を結成した。呼びかけ人の浅島誠・東京大特任教授(発生生物学)は「脊椎(せきつい)動物のメダカは、人間と共通する部分も多い。将来の日本の有人宇宙開発に役立つデータになる」と話す。
◇20機関が「宇宙メダカコンソーシアム」結成
計画では、二つの小さな水槽(7センチ×7センチ×15センチ)に、それぞれメダカを6匹ずつ入れ、ISSの日本実験棟「きぼう」で3カ月飼育する。3カ月あれば、地球から打ち上げた成魚の孫の代まで誕生させることが可能だ。打ち上げたメダカや宇宙生まれのメダカを地球に持ち帰り、骨や筋肉、遺伝子などへの影響を調べる。水の取り換えや餌やりの手間を減らす水槽を開発中だ。
宇宙では、放射線や無重力による健康影響が懸念されているが、その詳細な仕組みは分かっていない。若田光一・宇宙飛行士が今年3〜7月にISSに長期滞在し、多くのデータを集めたが、人を直接調べることは限界がある。動物なら、解剖したり組織を詳細に調べることが可能だ。
94年に向井千秋・宇宙飛行士が米スペースシャトルに搭乗した際、船内でメダカを約2週間飼った。だが、当時はメダカの全遺伝情報(ゲノム)解読の前で、十分な分析ができなかった。
コンソーシアムのまとめ役の三谷啓志・東京大教授(動物生殖システム学)は「宇宙で長期飼育した生き物を調べつくす、という実験は初めて。今後の宇宙滞在、太陽系探査に向けて、メダカをモデルに宇宙飛行士の健康管理に結び付けたい」と話している。【永山悦子】